サマソニ25周年、その裏側にあったブッキング事情|「狙い通り」ではなかったSUMMER SONIC 2026

25周年を迎えたSUMMER SONIC 2026。The Strokes、L’Arc-en-Ciel、Adoをヘッドライナーに、Jamiroquai、David Byrne、JENNIE、Kasabian、Suedeなど、サマソニの歴史を感じさせるラインナップが揃った。
しかし、20周年のアニバーサリーの当時の豪華ラインナップ比べると、洋楽フェスとして期待していたヘッドライナーやアーティストというわけではない。その背景にはコロナを経て、更にブッキングが困難になったさまざまな事情がある。
円安、出演料の高騰、世界的フェスとの争奪戦、そしてアーティスト側の事情。今回は、サマソニ25周年のラインナップから見えてきた“これからのブッキング”について考えてみたい。

サマーソニック25周年、「旬の音楽」が集まるフェスへ
サマーソニックがスタートしたのは2000年。フジロックとは異なる都市型・複数都市開催というスタイルを確立し、現在まで成長してきた。
海外の大物だけでなく、ブレイク直前のアーティストや国内勢を同じラインナップに組み込み、「その時代の音楽シーンを一度に体験できる場所」になったこともサマソニの大きな魅力だ。
その姿勢は25周年を迎えた現在も変わっていない。一方で、ブッキングを取り巻く環境は25年前とは大きく変わっている。
実はほとんどなかったサマソニの「狙い通りのブッキング」

興味深いのが、クリエイティブマンの清水直樹氏が、これまでコンセプト通りにブッキングできた年はほとんどないという趣旨の発言をしていること。
レジェンド級のアーティストが揃えば「今年は狙い通りですね」と思ってしまうが、実際には挑戦的なブッキングが実現せず、その結果として完成したラインナップだったケースもあるという。
つまりサマソニは、最初から完成図を描いて出演者を当てはめるのではなく、交渉を重ねながらその年にしか作れないラインナップへ着地させてきたフェスなのだ。
サマソニ2026の核となったThe Strokes、Jamiroquai、David Byrne
そんな中、25周年の核となったのはThe Strokes、Jamiroquai、David Byrneの3組だったのではないだろうか。
特にThe Strokesは、2000年代のサマソニ黄金期を知るファンにとって、アニバーサリーのヘッドライナーとして申し分ない存在。
そこへJamiroquai、David Byrne、Kasabian、Suedeらが加わったことで、かつてサマソニに通っていた洋楽ファンがもう一度帰ってきたくなるラインナップが形成された。

The Strokesが象徴した「サマソニの原点」

SUMMER SONIC 2023のBlur以来、3年ぶりに大御所ロックバンドがヘッドライナーとしてMARINE STAGEに帰ってきた。
「Hard to Explain」「Reptilia」「Last Nite」など、2000年代ロックのアンセムがスタジアムで鳴り響く光景は、まさに往年のサマソニそのもの。
世界の最新トレンドだけを追い続けるのではなく、サマソニが築いてきた歴史そのものを現在へ接続する。The Strokesは25周年を象徴するブッキングだったと思う。
2020年代に大きく変わったK-POPとの関係

そして近年、サマソニのブッキングで存在感を増しているのがK-POPだ。
過去にはBIGBANG、ブレイク前のBTS、BLACKPINK、NewJeans、aespaなどを起用。2026年もJENNIEやLE SSERAFIMなどがラインナップに加わった。
さらにK-POPだけでなく、keshiやAudrey Nunaなど、アジアにルーツを持ちながら欧米市場でも活躍するアーティストまで射程が広がっている。
実現しなかった「K-POPヘッドライナー」という構想
清水氏の発言からは、K-POPアーティストをヘッドライナーに据える構想が検討されたことも明らかになっている。
その候補として名前が挙がったのが、BTSのJUNG KOOK。
ソロでも世界的な成功を収めた彼がヘッドライナーになれば、洋楽ロック中心だったサマソニが25年間でどこまで変化したのかを象徴するブッキングになっていただろう。
2026年にはPeggy Gouへのオファーなども含め、K-POP/韓国系アーティストを軸とした一日を作る構想もあったとされるが、最終的には実現しなかった。
BEACH STAGEは“世界の音楽”を発見する場所へ

近年のサマソニで面白い変化を見せているのがBEACH STAGEだ。
前年にはラテン界のスターFeidがキュレーションを担当。そして2026年はCarín Leónを中心に、LATIN MAFIAやPaloma Morphyらが出演し、幕張のビーチがラテンの熱狂空間へと変化した。
さらに初日には“キング・オブ・ダンス”Omarionが登場し雨が激しくなる中、雨とダンスが混じり合う神秘的なパフォーマンスでオーディエンスを魅了した。MARINEやMOUNTAINとは違う音楽文化に出会える場所として、BEACH STAGEの役割はますます大きくなっている。

BABYMETALが作ったSONIC “METAL” STAGE
もうひとつ興味深かったのが、BABYMETALがキュレーションするSONIC “METAL” STAGE。
これは単純にクリエイティブマンが海外アーティストを一組ずつ交渉して集める従来型とは少し違う。
BABY METALがソニックステージに出演するアーティストをブッキングし方向性を作っていく。これはビーチステージのブッキング方法と同じで「アーティストがアーティストを呼ぶ」という、新しいサマソニのブッキングを象徴する試みだった。
Adoヘッドライナーの裏にあった想定外

一方、25周年でもブッキングが計画通りに進まなかったとされる部分がある。
当初は「A」から始まる海外ラッパーがヘッドライナー候補として進められていたとされ、その人物としてA$AP Rockyの名前が取り沙汰された。
最終的にはAdoがヘッドライナーを務めることになり、3日間のうち2日間を日本人アーティストが締める形となった。
結果だけを見れば大胆なラインナップだが、サマソニのブッキングが直前まで様々な事情によって変化していくことを象徴する出来事でもある。
サマソニのヘッドライナーしょぼい問題はどんどん深刻に?その背景には、円安と出演料高騰、世界的スターを呼ぶ難しさ。

現在の日本の洋楽フェスにとって、無視できないのが円安と世界的な出演料の高騰だ。
Sabrina Carpenter、Travis Scott、Billie Eilish、Justin Bieberクラスの「その年、世界中のフェスが欲しがるスター」をフェスのヘッドライナーとして日本へ呼ぶには、以前とは比較にならないほどのコストと交渉力が必要になる。近年だと一歩手前まで進んだが金額面で諦めたアーティストがEminemとDrakeだったらしい
Taylor Swift、Ariana Grande、Beyoncé、Rihannaらを過去に招聘してきたサマソニだが、今後は世界のフェストレンドをそのまま日本へ持ってくることだけが正解ではなくなっている。というか労力を使うためそのクラスを今の円安の中で呼ぶのは難しく、現時点ではそのクラスのブッキングは卒業したと語っている。
これからは「アーティストがアーティストを呼ぶ」

そこで今後重要になりそうなのが、アーティスト同士の関係性を生かしたブッキングだ。
例えばJamiroquaiに影響を受けたSuchmos、David Byrneが出演することで同じ日に見たくなるサカナクションなど、音楽的なつながりをラインナップそのものに作っていく。
前年にはヘッドライナーのAlicia Keysがブッキングにも協力したとされており、海外アーティストが決まることで国内アーティストも「このフェスに出たい」と思う循環を作ることができれば強い。
「サマソニに出たい」と思わせるブランドを作れるか
もうひとつ重要なのが、アーティスト側からの逆オファーだ。
世界的にフェスの数が増えた現在、出演料だけで海外の大型フェスと勝負するのは難しい。
だからこそ、「ギャラだけではなく、SUMMER SONICという舞台に出演したい」と海外アーティストに思ってもらえるフェスブランドを維持することが重要になる。
お金だけでは成立しないブッキングをどれだけ作れるか。これが今後のサマソニにとって大きな武器になるのかもしれない。
サマソニは“海外スターを集めるフェス”から次の段階へ

25周年のラインナップを見ると、サマソニがコーチェラやグラストンベリーのように海外の大物アーティストを並べるフェスから変化し始めていることが分かる。
The Strokesのようなサマソニの歴史を象徴する存在、JENNIEらアジアのスター、BEACH STAGEのラテン勢、BABYMETALによるキュレーション、そして日本を代表するアーティスト。
また、Wispやソロへ脱皮を果たしたJadeのようにこれからの活躍が期待できる期待の新人枠などそれぞれを組み合わせながら、「SUMMER SONICでしか成立しない3日間」を作ることが、これからのブッキングの鍵になるのではないだろうか。
25周年は「狙い通りではない」からこそサマソニらしい
The Strokes、Jamiroquai、David Byrneが揃った2026年を見れば、「25周年だから狙って集めたラインナップ」と考えたくなる。
しかし、サマソニの歴史そのものが、予定通りにいかないブッキングの連続だった。
K-POP、ラテン、ヒップホップ、メタル、国内アーティスト、そして往年のロックスター。時代に合わせてそのすべてを飲み込みながら形を変えてきたからこそ、25年間続いてきたのだろう。
「今年は誰を呼べるか」ではなく、「今年の条件でどんなサマソニを作れるか」。
25周年を迎えたSUMMER SONICは、次の時代の戦い方へ移ろうとしている。




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