映画『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー』感想|これはファンのための“ファンムービー”だ

映画『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー』を観た。
本作は、オアシスファンのための作られた“ファンムービー”だったように思う。故に幸運なことに2025年10月25日・26日の東京ドーム来日公演を体験できた人は、絶対に見るべき作品。
スクリーンに映し出されるのは、ファンの熱狂、ライブ映像、ノエルとリアムの再会の瞬間。10月25日・26日に体験したあの日、あの瞬間の記憶が一気に蘇ってきた。それだけで溢れ出す涙。

終盤で明らかになる本作のネーミングの由来。
ドント・ルック・バック・イン・アンガーが示すものとは?
『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー』とは?

本作は、5大陸で200万人以上を動員した歴史的な再結成ツアー「Oasis Live ’25」を追ったライブ・ドキュメンタリー。
ライブパフォーマンスだけでなく、リハーサルやバックステージ、そしてリアム・ギャラガーとノエル・ギャラガーが揃って応じた貴重なインタビューまで収録されている。
日本では2026年9月11日から2週間限定で劇場公開。まさにあの再結成を“映画”として記録した作品だ。

なぜ映画館で観るべきなのか?

今後ストリーミングで観られる機会があるとしても、本作は可能な限り映画館で観てほしい。
理由は単純で、大スクリーンと映画館の音響で体験する「Oasis Live ’25」の臨場感が凄まじいからだ。
数万人の大合唱、ギターの轟音、リアムの歌声。そのすべてが巨大な音の塊となって押し寄せてくる感覚は、自宅のテレビやスマートフォンではなかなか再現できない。
よくあるライブDVDではない。ちゃんとした「映画」になっている
本作で特に良かったのは、ライブ映像とインタビューを順番に見せるだけの作品ではなかったこと。
この手の音楽ドキュメンタリーは、インタビューとライブ映像の繰り返しで平坦になってしまうこともある。しかし本作が重点を置いているのは、オアシスと“観客”の関係だ。
なぜこれほど多くの人がオアシスを待ち続けたのか。再結成がファンにとって何を意味したのか。そこを描いたからこそ、一本の映画として成立している。

当時のオアシスを知らないZ世代まで熱狂している
「Oasis Live ’25」で印象的だったのが、当時からオアシスを追い続けてきた世代だけではなく、若いファンが非常に多かったこと。
リアルタイムのオアシスを知らず、YouTubeやストリーミング、スマートフォンの画面越しに“伝説”を知ったZ世代。そして親子でライブへ参加するファンの姿もある。
世代を超えて楽曲が受け継がれていく光景は、オアシス自身が敬愛してきたビートルズにも重なるものを感じた。
大人たちがヒーローを目の前にして泣いている

そして本作で最も心を動かされたのが、世界中のファンの表情だった。
テイラー・スウィフトやビリー・アイリッシュのコンサートフィルムでも観客の熱狂は描かれてきた。しかし本作では、大の大人たちが少年少女のような顔で、自分たちのヒーローを目の前にして涙を流している。
リアムとノエルが再び同じステージに立つ。それ自体が奇跡であり、その瞬間を自分の目で見ることができる。それだけで涙を流す理由としては十分なのだ。
そもそも「チケットが取れた」こと自体が奇跡だった
「Oasis Live ’25」は世界規模で争奪戦となったツアーだ。
東京ドーム公演でもチケットを手にできなかったファンが会場周辺へ集まり、雨の中で漏れてくる音を聴きながらオアシスの復活を楽しんでいた光景が忘れられない。
つまりライブへ行けた人間は、オアシスの再結成だけでなく、「その場にいられた」というもう一つの奇跡を経験していたのだと映画を観て改めて感じた。
チケットを持たないファンに捧げた「Some Might Say」
その象徴とも言えるシーンが、マンチェスターのヒートン・パーク公演だ。
チケットを手にできなかった大勢のファンが会場周辺へ集まり、丘から漏れてくる音を楽しむ。その現象は、ここ日本でも起きており雨が降る東京ドームから漏れてくる音漏れを聞いて熱狂するファンの姿を思い出させた。
そして、そんな会場の外にいるファンへ「Some Might Say」を捧げる場面。ここは個人的に、本作でも屈指の涙腺崩壊ポイントだった。

映画の中心人物は、リアムとノエル、そしてファン達

この映画を観ていると、「Oasis Live ’25」の主人公はリアムとノエルだけではなかったことに気づく。
16年間待ち続けたファン、初めてオアシスを見る若者、親から楽曲を受け継いだ子どもたち、そしてチケットがなくても会場の外までやって来た人々。
オアシスが再結成したというニュースではなく、“オアシスが帰ってきた世界で人々がどう変わったのか”を映しているところが、この映画の最大の魅力だ。
残念だった点① リアムとノエルの和解をもっと見たかった
一方で、物足りなかった部分もある。それは15年振りとなるリアムとノエルの再会のシーンだ。
リアムが合流するまで、ノエルが一人でリハーサルに臨むシーンは独特の緊張感があり、「ついに兄弟が顔を合わせる」という期待を高めてくれた。
だからこそ、リアム登場もすぐにリハーサルに入り、兄弟の再会が意外とあっさり描かれていたのは少し残念。また、再結成が決まった経緯やLive ’25が実現するまでの過程をもう少し深く掘り下げてほしかった。
個人的には、再結成発表時に大きな話題となったリアムとノエルが並ぶ宣材写真。その撮影現場や、久しぶりに二人がカメラの前に並んだ瞬間の空気感まで見てみたかった。
残念だった点② 楽曲をもっとフルで聴きたかった
楽曲をフルで楽しめたのは、オープナーとなった「Hello」と、ラストの「Champagne Supernova」くらいだっただろうか。
本作のタイトルにもなっている「Don’t Look Back in Anger」はほぼフルで収録されているものの、途中で別映像やフィルター演出が入るため、ライブそのものに没入しきれない部分もあった。
特に惜しかったのが、兄弟の絆を象徴するアンセム「Acquiesce」と、Live ’25でさらに磨きがかかった「Little by Little」。どちらも今回のツアーを語るうえで欠かせないハイライトだっただけに、もう少しじっくり聴きたかった。とはいえ、映画館の音響で再び聴けただけでも文句は言えない。
「Cigarettes & Alcohol」のポズナンとはなんだったのか?
その一方で「Cigarettes & Alcohol」の扱いは非常に印象的だった。
Live ’25で話題になった“ポズナン”についてもしっかり触れられ、観客が一斉に肩を組み、背中をステージへ向けて跳び続ける巨大な光景がスクリーンいっぱいに広がる。
実際のライブを体験した人なら、あの瞬間の熱気や身体に響いた振動まで蘇ってくるはずだ。
なぜ映画タイトルが「Don’t Look Back in Anger」なのか

ここから先はネタバレになってしまうため、映画終盤の詳しい描写は避けたい。
正直、観る前は『ドント・ルック・バック・イン・アンガー』というタイトルを見て、「オアシスを代表する曲だから付けたのだろう」くらいに思っていた。
しかし最後まで観ると、この曲名をタイトルにしたこと自体に、本作が描こうとした“過去との向き合い方”が込められていたように感じる。
マンチェスターにとって特別な「Don’t Look Back in Anger」
2017年5月22日、マンチェスター・アリーナで悲惨な爆破事件が起きた。
その後「Don’t Look Back in Anger」は、悲しみに包まれたマンチェスターで人々が自然発生的に歌い、街の連帯や癒しを象徴する楽曲のひとつになっていった。
リアムとノエルの和解、ボーンヘッドの帰還、そして長い空白を経て再び集まったファン。振り返れば、本作そのものが“怒りではなく、その先へ進む物語”だったのかもしれない。
「過去を後悔するな」ではなく、過去を抱えて前へ進む
リアムとノエルが歩んできた別々の16年間を消すことはできない。
バンドの解散も、兄弟の確執も、ファンが待ち続けた年月もなかったことにはならない。しかし、それらすべてを抱えたまま、もう一度同じステージに立つことはできる。
『Don’t Look Back in Anger』というタイトルは、そんな「Oasis Live ’25”の物語そのものを表しているように思えた。
映画のエンドクレジット「Listen Up」の選曲が素晴らしい
そして最後まで席を立たずに聴いてほしいのが、エンドクレジットを彩る「Listen Up」。
1stアルバム『Definitely Maybe』期にB面曲として発表されながら、ファンの間ではオアシス屈指の名曲として長年愛され続けてきたナンバーだ。
誰もが知る最大級のヒット曲ではなく「Listen Up」を最後に持ってくる。この選曲だけでも、本作が“ファンのための映画”であることを象徴しているようで嬉しかった。
10月25日・26日の余韻が残っているなら映画館へ

『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー』は、単なる再結成ツアーの記録映画ではない。
リアムとノエルだけでなく、16年間待ち続けたファン、若い世代、チケットを取れなかった人まで含めて、「オアシスが帰ってきた」という奇跡を記録した映画だ。
そして2025年10月25日・26日の東京ドーム公演に参加した人なら、スクリーンを見ながら何度もあの日へ連れ戻されるはず。
あの日の余韻がまだ冷めていないなら、ぜひ映画館で観てほしい。これは「Oasis Live ’25」をもう一度体験するための、ファンのためのファンムービーだ。



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