2024年 洋楽ベストアルバム

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2024 Best ALBUM

2024年 洋楽ベストアルバム |DJ PLUM ADVENTURETIMES

2024年代ベストアルバム

2024年は近年稀にみるビックアーティストのアルバムリリースが被るなど豊作が多い年であった。現代ポップシーンの四天王であるビヨンセ、アリアナ、テイラー、そしてビリーアイリッシュなどのビックアーティストが立て続けに新譜をリリース。ポストマーロンは、カントリーへ路線変更し結果チャートのが流れさえ変えてしまうほどの良作を生み出し、チャペルローンやラストディナーパーティーなどシーンを揺るがす新星が現れるなどポップカルチャーにおいてゴールデンイヤーと言える年であった。豊作が多い年なだけあって各メディア年間ベストアルバム選出が難しいといえる。本サイトでは、NMEJAPANやロッキングオンなどのメディアとは違った観点で、楽曲単位ではなくアルバムを通して聴いた際の没入感や一貫性を考慮し、年間ベストアルバムを選出!!

No.10 Peggy Gou |Hear You

今年のフジロックで初来日を果たし、キラーズと同時間帯ながらホワイトステージを熱狂のダンスフロアに変えたPeggy Gouのデビュー作。アルバムには、世界的なヒットを記録したアンセム「(It Goes Like) Nanana」レニー・クラヴィッツをフィーチャーし、大人の色気漂うR&Bテイストのハウストラック「I Believe in Love Again」、さらにグルーヴ感の強いベースラインとハウスミュージックにおけるお手本のような楽曲構成が際立つ「Lobster Telephone」など、多数の注目楽曲を収録。ハウスミュージックの新たなバイブルとなる作品で、全てのDJやトラックメーカーにとって必聴の一枚だ。

No.9 COLDPLAY|Moon Music

前作『Music Of The Spheres』に引き続き、本作も宇宙を飛び越えたサウンドで惑星をテーマとし月をモチーフとした音楽がコンセプトになっている。前作の過剰なポップ路線とは一転、今作ではポップとアンビエントが融合によって生み出された内省的でありながらもどこか幸せを感じさせるサウンドが特徴だ。

哀愁漂うメロディにキャッチーなフック、高揚感を掻き立てるサウンドが印象的なシングル「feelslikeimfallinginlove」やライブでの特大アンセムになること間違えなしのファンキーでダンサブルなナンバー「Good Feelings」など一度聴けば心をつかまれる楽曲が揃っている。アルバム全体の流れも抜群で、「MOON MUSiC」や「🌈」といった壮大なアンビエントトラックが効果的に散りばめられることによって、聴く者を宇宙空間へと連れ出すような没入感を与える。

No.8 Charlie xcx |Brat and it’s completely different but also still brat

2024年を代表するポップアルバムは、間違いなくCharli XCX『Brat』だろう。Atlantic Recordsに移籍後初のアルバム『Brat』は、リリースと同時に大きなムーブメントを巻き起こし、「ブラット・サマー」という新たなトレンドを生み出した。その勢いは衰えることなく、リリースされたリミックスアルバムが本作。リミックスという枠を超えて、まるでオリジナルとは全く異なる新しいバージョンのシングル集のような印象を与えている。

the1975をフューチャーした『I might say something stupid』は原曲を飛び越えたアンビエントなピアノバラードに仕上がっており、原曲特有のキャッチーさを削ぎ落とすことでよりアグレッシブなハウスに仕上げた『Talk talk』を筆頭に、アリアナ・グランデ、the1975、ロード、トロイ・シヴァン、ビリー・アイリッシュなど豪華なゲストが参加。オリジナルの『Brat』の世界観をさらに広げた多面性を強調する作品となっている。サマーソニック2017のキャンセル以来、久しく来日をしていないチャーリーだが彼女を更なる高みへ引き上げた本作を引っ提げて是非来日公演を実現してほしい。

No.7 PALEWAVES|Smitten

ロックパンクオルタネイティブエモ、80sシンセなど作品を出すごとに系統を変えてきたペールウェーブスだが本作は、これまでとは違ったサウンド『心地良さ』がテーマだ。リードシングル

『Perfume』をはじめ、『Thinking About You』『Gravity』などの楽曲が兼ね備えている心地良いサウンドに、フロントウーマンヘザーによる透明感ある歌声が絶妙に重なることで聴いた瞬間に本作の世界観に引き込まれるような仕上がりになっている。
*今月12月に来日を果たしたペールウェーブス。新譜に振り切ったセットの単独公演が素晴らしかったので来年のサマソニやフジロックでの再来日を望む!

No.6 Dua Lipa |Radical Optimism

本作も引き続き、リリースしたシングルを悉くチャートインさせるなどポップシーンを騒がせた現代のドナサマーデュアリパの新作。11月に開催されたさいたまスーパーアリーナでの来日公演が即ソールドアウトしている点から彼女の人気が一目瞭然だろう。

特筆すべきは『These Walls』『Houdini』『Training Season』などのシングル楽曲がアルバム全体のテーマである希望と挑戦を象徴するような仕上がりになっている点でデュア・リパの新たな方向性を示す楽曲でありながらアーティストとしての彼女の成長を感じさせるのに大きな寄与を果たしている。

No.5 Billie Eilish|HIT ME HARD AND SOFT

ビリーと兄フィニアスが手がけた3作目のアルバムは、二人の才能が詰まった傑作。フェーニアスがプロデュースした洗練されたトラックと、ビリーの哀愁漂うウィスパーボイスが絶妙に絡み合い、聴けば聴くほどその深い世界観に引き込まれる。

収録曲も充実しており、感情を揺さぶるポップナンバー「BIRDS OF A FEATHER」、クィアなメッセージを込めた「LUNCH」、ジブリの『千と千尋の神隠し』にインスパイアされた「CHIHIRO」などが光る。また、新たな試みとしてトラヴィス・スコットを彷彿とさせる一曲内で展開が大きく変化するビートチェンジ。「La’mour de ma vie」や「BITTERSUITE」など二部構成の曲がアルバムに楽曲の深みを与えている。

どの楽曲も緻密に作り込まれ、アルバム全体を通して聴くと、まるで物語を追体験しているような没入感を味わえる。細部まで計算された壮大な音楽の旅が楽しめる一枚だ。

No.4 GIRL IN RED|I’m Doing It Again Baby!

全10曲のシンプルな構成ながら、多彩な曲調で赤を超えたカラフルな音楽性を感じさせる作品だ。テーマには、セカンドアルバムにまつわるジンクスへの皮肉を込めた遊び心がある。

これまでのスタイルとは異なるシンプルでポップなサウンドが印象的な先行シングル『Too Much』、サブリナ・カーペンターを客演に迎えた「You Need Me Now」やインディーロックの的アプローチによる攻めた楽曲「Phantom Pain」「DOING IT AGAIN BABY」などの表現のレンジを広げた良作が収録。

特筆すべきナンバーは前作のリードシングル「Serotonin」で掲げたメンタルヘルスのテーマをポジティブに昇華したピアノポップバラード「i’m back」で、涙を誘うポジティブなナンバーに仕上がっている。全編を通してジャンルを超えた音楽性と、彼女のカラフルな才能が光る一枚だ。

No.3 Ariana Grande|Eternal Sunshine

ディーバは傷つき、成長する
映画『エターナル・サンシャイン』をリファレンスとし、元夫や過度に近かったファンとの別れをテーマにしている。アルバムは『別れ』を中心に展開しはじまりの挨拶から対照的なメッセージで物語が始まるのが印象的だ。インタルードを挟みながら、別れと成長が描かれている。収録楽曲の魅力として、ゴスペル調の『true story』ではコーラスとの絡みが秀逸。『boy is mine』はブランディーとモニカの名曲を現代風にアレンジ、アリアナならではの解釈で見事に歌い上げている。

尚この曲には特別な思いが込められており、アリアナ自身も再構築したいと語っていたとのこと。先輩アーティストへの敬意が感じられる1曲だ。アルバムのサウンドは、00年代の懐かしいR&Bとポップが中心で、先行シングル『yes, and?』はハウステイスト楽曲だが、わかりやすいダンスミュージックはこの曲のみで、彼女の内面が詰まったR&Bリスナーに向けた作品になっている。傷つきながら成長していくアリアナの新たな一面を感じられる一枚だ。

No.2 Tyla|Tyla

世界的にヒットした『Water』やアマピアノというジャンルを広めたデビューアルバムのアーティスト、Tyla(タイラ)。2002年1月30日生まれ、南アフリカ・ヨハネスブルク出身22歳のアーティストによるデビューアルバム。本作は、ポップ、R&B、アフロビーツ、そしてアマピアノを巧みに取り入れたサウンドが特徴で、彼女の繊細で確かな歌唱力と優れたダンスパフォーマンスが新人大賞にふさわしい完成度を誇る。
*アマピアノは南アフリカ発祥のハウス+ヒップホップ+ジャズ+クワイトミュージックを融合させた最新のダンスミュージック。

タイラのハスキーで甘い歌声はリアーナを彷彿とさせる魅力的な歌声だけでなくリラックスしたサウンドとアマピアノのリズムがアルバムに深みを与えデビュー作とは思えないほどの仕上がりとなっている。本作で世界的なデビューを果たしたタイラ。サマーソニック2024での圧巻のパフォーマンスも忘れ難い素晴らしいものであった。今後の活躍がますます楽しみだ

No.1 Us|Underground Renaissance

今年のフジロックで忘れ難いパフォーマンスを見せた新人アクト、Us(アス)。疾走感あふれるロックンロール・リバイバルなサウンドとパン・ヒルヴォネンによる哀愁漂うハーモニカが特徴的な彼らのサウンドは、エルヴィス、ストーンズ、リバティーンズ、初期アークティック・モンキーズを想起させる。

デビューアルバム『UNDERGROUND RENAISSANCE』。なんと1日で全曲レコーディングされた本作は、全11曲30分弱とい短い尺でありながら各曲のクオリティは非常に高く、心を奪われてるうちにアルバムを完走しちゃうほど魅力的な楽曲に溢れている。

具体例でいうと、ロックンロール・リバイバルやガレージロックを体現したリードシングル『Night Time』『Paisley Underground』、アルバムのラストトラック『While You Danced』、そしてボーナストラックの『Black Sheep』を聴けばその魅力がすぐに伝わる。

また、『Hop On A Cloud』『Carry Your Bag』などは、ガレージロックのテイストを取り入れたキャッチーなブリティッシュポップのサウンドに仕上がっており、バラードナンバー『Just My Situation』は初期オアシスを思わせるサウンドで、リアム・ギャラガーを彷彿とさせる透明感と伸びのあるボーカルがエモーショナルだ。
最後になるがエルヴィス、ストーンズ、リバティーンズのサウンドを身近にさせた本作は、個人的年間ベストアルバムだ。

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