Billie Eilish・Hit Me Hard and Soft
ビリー・アイリッシュ-ヒット・ミー・ハード・アンド・ソフト
アンビエントで美しいタッチで描く心のキャンパス
アリアナを筆頭に、デュア・リパ、テイラー、そしてビヨンセによる怒涛の新譜リリースが続き、ポップカルチャーにおけるゴールドラッシュのような黄金期であるが、これらの流れに負けずとビリーも前作から3年ぶりになる3rdアルバム『HIT ME HARD AND SOFT』をリリース
本作の魅力は、トラックの完成度が際立っていること。兄のフェーニアスが手がけたプロダクションが光り、作品全体に深みを与えている。ビリーのウィスパーボイスを最大限に生かしたアンビエントな音色や切なさを感じさせるアコースティックギターの旋律が特徴的で聴けば聴くほどその世界観に引き込まれていく。それはアルバムジャケットの雰囲気が本作の方向性を表しているように、本作は聴けば聴くほどサウンドの深みにハマってゆく入感が凄まじい良作だ
アルバムの聴きどころ
コンセプトアルバムとして模範的なスタートを切るファーストトラック『SKINNY』から『LUNCH』へのバトンタッチの場面では楽曲と楽曲の間の繋ぎ目がわからないくらいシームレスな流れになっていて素晴らしいまた、アルバムの流れだけではなく、個々の楽曲も魅力的であり
千と千尋の神隠しをリファレンスに使った『CHIHIRO』では次第に増していくシンセのオートメーションが壮大であり、音色の使い分けによって表現される世界感に圧倒され美しくも哀愁感漂う音色を使ったアルペジオのフレーズが印象的なポップバラード『BIRDS OF A FEATHER』では、クイアとしてのビリーが捧げたコンディションバラードにただただエモーショナルになる。
*BIRDS OF A FEATHERは、同類の集まりというイディオム。
ビリーはクィアだとカミングアウトLGBTQメッセージを込めた楽曲
次に、新たなアプローチとしてトラヴィス・スコットの楽曲のような一曲の間で大きな変化が起こる二部展開。いわばビートチェンジを取り入れることによって表現の幅を広げたことも本アルバムの聴きどころだと思う。例を上げて言うと『La’mour de ma vie』・『BITTERSUITE』・『BLUE』
で繰り広げるビートチェンジが見事で、特に、悲しげなアコギの旋律をバックに歌う『La’mour de ma vie』では冒頭とは全く違う展開を魅せ、次第に勢いを増すKICKをトリガーにThe Weekndの『Blinding Lights』を彷彿とさせるシンセのリフが繰り出される
80年代シンセへビートチェンジこのビートチェンジが本当に圧巻で楽曲の進化という点では、本作の一番の聴きどころだと思う。
最後になるが、前作のアルバムトラックである『Happier than ever』でも怒涛のラスサビ展開など新たな試みがあったわけだが今作も変わらずダークでアンビエントなサウンドだけではなく、これまでとは違った形で、世界感を深めた二人は、やはり別次元の表現者だ。
1. SKINNY/スキニー
2. LUNCH/ランチ
3. CHIHIRO/チヒロ
4. BIRDS OF A FEATHER/バーズ・オブ・ア・フェザー
5. WILDFLOWER/ワイルドフラワー
6. THE GREATEST/ザ・グレイテスト
7. L’AMOUR DE MA VIE /ラムール・ドゥ・マ・ヴィ
8. THE DINER/ザ・ダイナー
9. BITTERSUITE/ビタースイート
10. BLUE/ブルー
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